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おやどりことり

親鳥子鳥

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年10月~1926(大正15)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,828 字 · 181 页

青空文庫

と答えてやる。すると、

「いいえ、一羽も残りませんよ。鉄砲の音で皆逃げてしまいます」

と天晴れ兄貴をやり込めた積りでいる。しかし時には真正に凹まされることがある。

「お父さん、家の梯子段は何段ありますか?」

と突然訊かれた折、お父さんは、

「これは一つ浩二にやられたよ」

と直ぐに兜を脱いだ。知らないものとしては自分の家の梯子段の数が諺になっている。

「一番上を入れて十二段ですよ」

と浩二は勘定していた。

さて、節分の晩、お祖父さんは離れから茶の間へ入って来て、

「さあ、今年も無事で豆を撒くかな」

と一種の感慨を洩らした時、

「お祖父さん、家中の人の年を合せると二百八十七になりますよ」

と浩二が言った。今夜は年越しだと聞いて聯想したのである。

「二百八十七? それぐらいのものかね」

とお祖父さんはお祖母さんと二人丈けでも百三十幾つになるから、もっと多いと思っていたのらしい。

「お蔦を入れれば三百八、絹子さんも入れれば十一人で三百二十八ですわ」

と千代子も悉皆暗誦していた。絹子さんはもうお多福風が直って旧の通りの美人に戻ったが、未だ逗留している。東京が気に入ったようだし、何うせ東京へ縁づける積りだから少時預かって貰いたいと郷里の御両親からその後頼んで来たのである。