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おやどりことり

親鳥子鳥

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年10月~1926(大正15)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,828 字 · 181 页

青空文庫

これは文一君のお父さんが暦を調べて一番好い日を選んでくれたのである。成程、吉日だと見えて、早目に出掛けたにも拘らず、もう大勢詰めかけていた。僕達のように中学生ばかりでない。疾うに卒業して、学生でもなく生徒でもなく、受験生という変体名称の下に甲羅へた髯武者達が来て、入学しない中から日和下駄を穿いて周囲を睥睨していた。

「大内君、五十人からいるぜ。そうして皆強そうな人ばかりだ」

と文一君は目の子勘定をして、もう怖じ気がついた。

「何あに、腕力の試験じゃないんだから大丈夫だよ」

と虚勢を張っていた僕も、矢張り同級生で一足先に来ていたのが理科千五百何番という受験証票を見せてくれたのには、素より覚悟の上ながら容易のことでないと思った。文科は更に多かった。文一君が千八百二十五番で、僕が千八百二十六番。

「大変だね。この分じゃ二千を越すぜ」

と文一君が言った。

「無論さ。後二日あるから二千五百ぐらいになるだろう」

「やれやれ、迚も見込はない。千八百二十五番か。まるで自動車の番号だね」

「お互いさまだよ。僕のは僕のところの電話番号よりも百多い」

「こんなことなら、用心の為めに第二班をかけて置くんだったになあ」