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おやどりことり

親鳥子鳥

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年10月~1926(大正15)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,828 字 · 181 页

青空文庫

と約束した侭、以来信義を守っていました」

「ははあ、すると満更の白痴でもなかったんだね」

「いや、何うして何うして、『悧巧な顔をして稼いでも日に一両はむずかしい。馬鹿面をして遊んでいても五十銭にはなる。何方が徳でがんしょう?』と言いましたよ。久太には村のものは素より近郷近在のものまでが瞞されていたんです。何方が悧巧でがんしょう? ハッハハハハ」

と絹子さんのお父さんは打ち興じた。

「忌々しい奴ね。私も五十銭銀貨を持って追っかけてやったことが度々あってよ」

と絹子さんは今更口惜しがった。

「やあ、お賑かですな。よくお出下さいました」

と折からお父さんが帰って挨拶に現れた。僕は名代役が解けたから、失礼して勉強部屋へ罷り下った。

翌々日絹子さんはお父さんと一緒に帰郷の途についた。前日四谷と往復のあったことは言うまでもない。僕は郁子と敏子を連れて東京駅へ見送った。芳夫さんも来ていた。

「今度お出になる時は函迫ね」

と敏子が車窓で囁いた。敏子は函迫が理想である。

帰りは途中まで一緒だから、芳夫さんも同じ電車に乗って、

「源太郎君、もう数学はあれで沢山だから、これから暗記ものに全力を注ぎ給え」