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おやどりことり

親鳥子鳥

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年10月~1926(大正15)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,828 字 · 181 页

青空文庫

或晩お隣に泥棒が入った。その際家のブル公が立てた功績は特筆大書に値する。現にその翌日「ブル公さまへ御礼」として牛肉が二斤台所へ届いた。ブル公は善隣の誼みとして生垣の隙間から入り込み頻りに吠え立てたのである。泥棒は拵えた包を置いたまま逃げてしまった。お宅は無事かという見舞ながらの注意があったので、僕達は夜が明けると直ぐにお隣りへ見に行った。

「大きな足跡だね」

と僕は縁側の彼方此方に泥足の跡を認めて探偵気分になった。

「座敷にもある。二人らしい。ブル公が吠えてくれなかったら酷い目に遭うところだったよ」

と文一君はブル公の頭を撫でながら未だ怖がっていた。

「人間の足跡と同じね」

と浩二は不審を起した。

「人間だもの、泥棒は」

と僕が教えてやると、

「人間かい、泥棒は? 驚いたなあ。僕は獣だと思っていた」

と浩二がませた口調で云ったので、皆大笑いをした。

「然うですね。大人でも泥棒は人間とは思いませんよ。坊ちゃんは穿ったことを言う」

と文一君のお父さんは感心した。

しかし浩二に於てはこれは冗談でも洒落でもなく、正直正銘な思い違いだった。道理でその前から、

「泥棒と犬とは何方が強いだろう?」