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とうくろうちそう

討九郎馳走

山本 周五郎

「内蔵允留守」成武堂、1942(昭和17)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,250 字 · 21 页

青空文庫

「は、心得ました」彼らは面をひきしめた。

「すぐまいれ、ぬかるな」

二人は袴の股立をとりながら、町家の軒先づたいに、いま来たほうへ走っていった。屋敷へ帰った討九郎は、着物も脱がず、居間へはいって仰反に倒れるとそのまま鼾声たかく寝こんでしまった。叩きのめされたように、ぐっすりと眠った。明けがたになって、焼けつくような喉の渇きに眼がさめ、枕許の水を飲んでいると、庭の方で松之丞の声がした。……討九郎は起きあがって廊下へ出た。まだ酔いがさめていないので、ひどく足がふらついた。

「松之丞か」暗い庭の向うへ呼びかけると、霜ばしらを踏み砕きながら松之丞が走って来た。

「どうだ、なにも変りはなかったか」

「は、唯今まで見張っておりましたが、なにごともございませんでした」

「弥五郎はどうした」

「もう戻るころだと存じます」

「一緒ではなかったのか」

「は、念のため老臣がたの宿所を見てまいると申しまして」

云いかけて松之丞はふりかえった。討九郎も裏門の方へ眼をやった。誰か走って来る跫音がしたのである。それは貝塚弥五郎だった。黙って縁先まで走って来た彼は、そこに主人の姿をみいだすと息を喘がせながら、