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とうくろうちそう
討九郎馳走
山本 周五郎
「内蔵允留守」成武堂、1942(昭和17)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,250 字 · 21 页
膝づめにのっぴきさせぬ言句だった。うしろには川越無右衛門はじめ、徒士組三十人が鉄砲を構え、すわといえば切って放たんず意気ごみである。……理非は明白だ、これ以上なにかするとすればそれは合戦である。義直はつきあげてくる忿怒をけんめいに抑えながら、
「……見知りはない」とひと言、「乗物やれ」そう云って顔をそむけてしまった。
大納言義直は斯うして岡崎を去ったが、そのあとで仔細を聞いた老臣たちは驚き、すぐ討九郎に謹慎を命じたうえ、江戸表へ急使をもってこれを報告した。監物忠善からは折返し使者が来た。老臣たちへはなんと云う口上だかわからない。討九郎へは墨付だった。それには次のような意味が書いてあった。
申し遣わすこと、そのほうに馳走番を命じたる仔細、いまこそ合点まいりたるべし。よき仕方なり褒めとらす。余が帰国までその心得おこたるべからず。
討九郎ははっと眼がさめたように思った。じぶんを馳走番にえらんだ主君の真意がいまはじめてわかったのである。だあん! いつか鉄砲的場で、頭上に炸裂した主君の鉄砲の音が、まざまざと耳底によみがえってきた。彼は墨付を押し戴きながら「……殿」