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とうくろうちそう
討九郎馳走
山本 周五郎
「内蔵允留守」成武堂、1942(昭和17)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,250 字 · 21 页
二
しかもそういうときの彼は精気溌剌として、全身が炸裂する弾丸のようにみえ、その圧力をもって百千の人数を自由自在に動かしていた。
これが兼高討九郎の本領であった。不愛相で口下手で、性質はどちらかというと粗暴で人づきの悪い方だから、城中の勤めなどあまり評判がよくない。ただ徒士組を指揮して野戦の訓練をするときだけが、もっとも得意でもありその人柄にぴったりしているのだ。……ところで馳走番とはどういう役だろうか。
二
岡崎は東海道の主要な駅の一にあたっているので、参覲交代で上下する諸大名がたえず泊るし、尾張、紀伊の両家はじめ幕府重職の宿泊することも多い。それで「作法触れ」「馳走触れ」というものがあった。作法触れというのは町役人の方のつとめで、町の騒音をとりしまり、道を清めたり、水手桶を出したり盛り砂をしたりするのである。馳走触れというのは、宿泊する大名の格式によって、出迎え見送り、宿所の世話、接待、饗応などをすることで、おもに町奉行がその衝に当っていたけれども、べつに専任の者がいて城中とのあいだを斡旋した。これが馳走番である。ことに尾州家や紀州家が泊るおりには、「おはなし相手」