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ろんごものがたり
論語物語
下村 湖人
「現代」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 132,688 字 · 266 页
――どうだ、ぎゃふんと参るじゃないか。」
みんなは默って考えこんだ。曾参は相変らず微笑していた。
「それで君等はどうしたい。」
と、しばらくして、また一人が言い出した。
「みんなきまりが悪くなって、默って立っていたさ。」
「それっきり先生は何も云われなかったのかい。」
「いや云われた。恐ろしく沈痛な口調でね。……今はっきり云われた通りには覚えていないが、何でもこんな意味だった。――3言葉というものは、それ自身では無力なものだ。受身で学問をしている人に、千万言を費して教えても、何の役にも立つものではない。だからわしは、君等が求めに求めて憤りを発するほどに熱して来ない限り、君等の蒙を啓いてやる気にはなれない。君等は、自分でわかってもいないくせに、とかく気の利いた言葉だけを求めたがるが、わしは、君等が一通り道理を会得した上で、それを表現しようとして苦しんでいるのを見なければ、的確な言葉を与えたくないのじゃ。無論わしは君等に道理の一隅だけを示してやりたい。君等はその一隅を手がかりに、他の三隅を自分で発見すべきじゃ。もしそれが出来なければ、わしはもう君等にそれ以上教えようとは思わない。