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ろんごものがたり

論語物語

下村 湖人

「現代」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 132,688 字 · 266 页

青空文庫

じゃが、学問の尊さを知り、自ら求めて学ぼうとする熱意を持ちはじめたのは、十五の年じゃ。恥かしい話じゃが、それまでは夢うつつで、何の自覚もなく、教えられるままに、ただ物真似をしていたに過ぎなかった、物真似は学問ではない。まことの学問は、自ら求めて勉め励むところに始まるのじゃ。」

門人たちの多くはうなずいた。中には思わず眼を伏せたり、顔を赧らめたりする者もあった。

「やっと自分というものに目を覚まして、学問に志すには志したものの、例の貧乏で一心不乱というわけにはなかなか行かなかったものじゃ。しかし、また考えて見ると、貧乏のお蔭で、いろいろの仕事を次から次へと覚えこむことが出来た。これで、今でも金の勘定が出来るし、穀物の蔵番や、家畜の世話をやらされても、一通りのことは出来る自信があるのじゃ。ははは。」

「先生、それで思い起しましたが――」

と子貢が、突然口をはさんだ。

「1呉の大宰が、先生のことを聖人だと申して居りました。」

「ほう、呉の大宰が?」

「そうです。先生が詩書礼楽のことから、下々の人のやるような事まで、何一つお通じになっていない事がないので、大宰は全く驚嘆して、こんな人こそ聖人というのだろう。