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ろんごものがたり
論語物語
下村 湖人
「現代」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 132,688 字 · 266 页
孔子の言葉は、容易に終りそうにない。
「道は一つだ。心に敬しみさえあれば、物事を軽率に判断することもなかろうし、わかりもしない事をわかったように見せかけることもないだろう。」
「別に、わからない事をわかったように見せかけたつもりはありませんが……」
子路は、少し不服そうに、言葉をはさんだ。
「そうか、そう自分では信じているのか。」
「少くとも、今日の事では……」
「ふむ。するとお前は、お前自身何を考え、何をやっているのかさえ、よくはわかっていないようだな。」
孔子もまだ若かった。彼の言葉には、かなりの辛辣さがあった。
「お前がさっきの人をつれて、ここにやって来た時には、お前は何もかも知りぬいた人のような顔をしていたのだ。礼のことも、そして私が今日大廟でどんな心でいたかも。」
「それは全く私の誤解でした。」
「誤解? なるほど人間には誤解というものがある。そして、もしそれが敬しみに敬しんだ上での誤解であるならば、許されてもいい。しかし、万一にも、自分を誇示したい念が急なために生じた誤解であるとすると、それは最早や誤解でなくて虚偽だ。自分自身に対する不信だ。生命の真の願いを自ら暗ますものだ。