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ろんごものがたり

論語物語

下村 湖人

「現代」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 132,688 字 · 266 页

青空文庫

それに、万一、自分に一応の相談をした、とでも云いふらされると、これから自分がやって行こうとする政治の精神を、傷けることにもなる。出来れば、自分のいった意味を、はっきりさして置くに越したことはない。しかし、祭典の計画について、直接の相談もうけないで、こちらからそれを云い出すのも非礼だ。何とか方法はないものだろうか。)

孔子はそんなことを考えて、いい機会の来るのをねらっていた。

ところが、ある日、樊遅が孔子の供をして、馬車を御することになった。樊遅は孔子の若い門人の一人である。武芸に秀でているために、孟孫子に愛されて、しばしばその門に出入する。孔子は、彼ならば、自分の意志をはっきり孟懿子に伝えてくれるだろう、と考えた。

「先達て珍しく孟孫がたずねて来て、孝道のことを訊いていたよ。」

孔子は御者台にいる樊遅に話しかけた。

「はあ――」

「で、わしは、違わないようになさるがよい、と答えて置いた。」

「はあ――」

樊遅は何のことだがわからなかった。「違わない」というのは、親の命令に背かないという意味にもとれるが、孟懿子には、もう親はない。そう考えて、彼は手綱をさばきながら、しきりと首をひねった。