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まけないおとこ
負けない男
佐々木 邦
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1930(昭和5)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,799 字 · 202 页
捨てる神、拾う神
「まあ!」
と拍子抜けがした。それはその夏堀尾君が鞆で撮った道子さんの写真だった。
「ハッハヽヽヽ」
「お担ぎになったのね」
「いや、女は直ぐに増長するそうですから」
と堀尾君は懸念を有りのまゝに述べた。
捨てる神、拾う神
夜の十一時過、堀尾君は安藤先生の面前を辞去すると直ぐに、道子さんのところへ急いだ。唯さえ足の速い上に吉報だった。黒い椎の葉の透間から二階の灯が見えた時は殆ど辷り込みの要領だった。
「御免」
と案内を求めると、道子さんが出て来て、
「晩かったのね」
とニッコリ囁いて、次に、
「まあ! 何うぞ。叔母さん、堀尾さんがお見えになりました」
と公明正大を期した。
「大変晩く伺いました。昨夜忘れ物をしたものですから」
「ございましたよ」
「ありましたか?」
「オホヽ」
「もう晩いですから、戴いて帰ります」
「まあ、一寸宜しいじゃございませんか?」
「御迷惑でしょう。もう十一時過ですから」
と堀尾君は十一時過が元来の約束だった。
「いらっしゃいまし。まあ、何うぞ」
と叔母さんも斯う大声で話されては出て来ない次第に行かない。
「昨晩は失礼申上げました」
「何う致しまして。さあ」