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まけないおとこ

負けない男

佐々木 邦

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1930(昭和5)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,799 字 · 202 页

青空文庫

人格上面白くない。君は何んなに苦しくても、前借をしちゃいけない。これは苦労人の意見だ」

「有難う」

と堀尾君は前借をする身分でないけれど、上る方には興味がある。年中持ち出しで生活するのでは道子さんの信用がなくなる。結婚を目の前に控えて多少考えていたところだから、

「前借はしなくても何うにか斯うにかやって行けそうだけれど、時々上ることがあるのかい?」

と訊いて見た。

「あるとも」

「半期半期かい?」

「いや、実に気紛れだ。僕達は二月続けて上ったから、占めたものだと思っていたら、もう些っとも上らない」

「二度も上っていれば好い方だろう?」

「悪い方でもなかろうと思うけれど、一切秘密だから他の相場が分らない。兎に角覿面だ。勉強すると上る。君は屹度上っているよ」

「駄目だよ。未だ入ったばかりだもの」

「そんなことにはお構いなしだ。実に妙なところだよ。兎に角、前借りをすると上らないことが分ったから、僕達も今月から改悛して、差当り郷里の親父へ御用金を仰せつける。芳野君は今月の俸給をボーナスぐるみ掏摸に取られたと言ってやる」

と三輪君が素っぱ抜いたものだから、

「おい/\、好い加減にしろ」