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まけないおとこ
負けない男
佐々木 邦
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1930(昭和5)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,799 字 · 202 页
「あなたが堀尾さんですか?」
と委員長は案外丁寧だった。
「はあ。何分宜しくお願い申上げます」
「お掛け下さい」
「失礼致します」
「早速ですが、専務のお指図に従って、真の形式的に考査を致します」
「はあ」
「有りのまま御腹蔵のないところをお答え下さい」
と委員長は手帖と鉛筆を手にして、堀尾君をジロ/\見据えた。
「はあ。実は……」
「履歴書はお持ち合せありませんか?」
「実は……」
「はあ?」
「この春一度御銓衡を受けたものでございます」
と堀尾君は運を天に委せるように頭を下げた。
「はゝあ。何処か見覚えのあるように思いましたが、成程」
「一寸お待ち下さい」
と委員長は急いで出て行って、書類を一束持って来た。それを頻りに撥った後、
「卒業成績は素晴らしいじゃありませんか?」
「いや、一向」
「人物考査の方で落ちていますね」
「多分然うでしょう」
と堀尾君は苦しい。
「態度傲慢という訳になっています」
「…………」
「お見受けしたところ一向そんな風もありませんが、確かに私の書いた字です」
「…………」
「速記の方に何か残っていましょう」
と委員長は又撥って見て、
「はゝあ」
と驚いた。
「その折は飛んだ御無礼を申上げました」