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まけないおとこ

負けない男

佐々木 邦

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1930(昭和5)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,799 字 · 202 页

青空文庫

「あの堀尾さんでしたか?」

「はあ。申訳ありません」

と堀尾君も大切の瀬戸際だ。

「いや、構わんです。ハッハヽヽ」

「今更御採用願えた義理じゃありませんが、先生が折角御推薦下さいましたので」

「然うおとなしくしていらっしゃる中に決定致しましょう。明日からお出下さい」

「はあ」

「昔馴染ですから、もうこの上銓衡に及びません」

「有難うございました」

「ところで俸給ですが、あの時入った連中と同じことに月五十五円と御承知下さい」

「はあ」

「賞与が半期に一月半」

「はあ」

「仕事の方は明日又申上げましょう。九時初めの五時退出ってことになっています」

「甚だ勝手ですが、私は唯今旅行中ですから、何なら一寸郷里へ帰って出直して来たいんですけれど」

「それじゃ然うして下さい。二三日のところは何方でも宜いです」

と委員長はナカ/\分った人だった。

堀尾君は直ぐその足で西本教授のところへ又駈けつけて、一部始終を報告した。

「○○ボウセキニキマツタ。イロイロアリガタシ。アトフミ」

と鞆へ打電したこと無論である。それから郷里へ帰って翌日引き返した。その翌日出社、辞令を受けて、漸く月五十五円の会社員になった。