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にせもの
贋物
葛西 善蔵
「早稲田文学」1917(大正6)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,476 字 · 43 页
しないのです。私が間にはいって嘗めた苦労の十が一だって、あなたには察しができやしません。私はどれほど皆から責められたかしれないのですよ。……お前の気のすむように後の始末はどんなにもつけてやれるから、とても先きの見込みがないんだから別れてしまえと、それは毎日のように責められ通したのですけれど、私にはどうしてもこの子供たちと別れる決心がつかなかったのです。つまり私のばかというもんでしょう……」
「まあまあそれもいいさ。何事も過ぎ去ったことだ。いっさい新規蒔直しだ。……僕らの生活はこれからだよ!」
生活の革命だと信じて思い昂っている耕吉には、細君の愚痴話には、心から同情することができなかったのだ。
惣治は時々別荘へでも来る気で、子供好きなところから種々な土産物など提げては、泊りがけでG村を訪ねた。
「閑静でいいなあ、別世界へでも来た気がする。終日他人の顔を見ないですむという生活だからなあ」
惣治はいつもそう言った。……厭な金の話を耳に入れずに、子供ら相手に暢気に一日を遊んで暮したいと思ってくるのであった。耕吉は弟があの山の中の町から出てきて、まるで別世界へでも来たように感心するのを、おかしがった。