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あしがるほうこう
足軽奉公
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1945(昭和20)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,949 字 · 28 页
我儘な、不羈奔放そのものといった風格が感じられる。……その館へ妹を奉公に、そう聞いただけで藤六はその結果がどうなるか推察できた、それではっきり断ったのである。しかしそれから間もない或る日、……城の大手の道普請で、かれが人夫溜りの警護に立っていると、ふいにお浜館の忠秋が通りかかった、二人の小姓を伴れただけで、いつものとおり大股にさっさと歩いて来たから、藤六はすぐ人夫に下座を命じた。そのときすでに眼の前へさしかかっていた忠秋は、ふと藤六をみつけて歩み寄った。
「そのほう右田藤六と申す足軽だな」
「はっ……」
かれは膝をつき頭を垂れた。
「……仰せの如く藤六にございます」
「余を存じておるか」
「恐入り奉る、お浜館さまと存じ上げます」
「余もそのほうを知っておる」
忠秋はするどい眸子でこちらをねめつけながら、
「……新参の足軽、右田藤六、そうたしかめたのは五十日ほどまえのことだ、……ひとくせある面だましい、よほど兵法にも堪能であろうと見た、そのほうなにをやる、刀法か、槍か」
「恐れながらそれはお鑑識ちがいにございます。ごらんのとおりの小足軽、なかなかもちましてさような……」