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あしがるほうこう

足軽奉公

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1945(昭和20)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,949 字 · 28 页

青空文庫

しかし藤六にとっては、そういう扱いをされるほうが堪らないようだった。かれはますます身を屈め、肩をすぼめるような感じで日を過していった。――するとある日、組頭の甚之允がやって来て、

「汀どのを奉公におあげなさらぬか」

と云いだした。

「そこもともご存じだろうが、さきはお上の御舎弟、つまり忠秋さまのお浜館なのだが」

「それは有り難いことでございます」

藤六はそう云って少し考え、

「しかし折角ではございますが、妹はわたくし手許で躾けてまいりたいと存じますから」

「そこもとはお浜館のお噂を聞いておられるな、それでなにかいかがわしい御奉公のように思うのではないか」

「さようなことはございません、ただわたくし共は早く両親に死別いたしまして、ずっと二人で過してまいりました、いわばわたくしが親代りになって育てましたので、間もなく縁定めも致したいと存じますし、その儀はひらにご辞退をつかまつりとうございます」

それでもとは云いかねたとみえて、甚之允は不本意そうに帰っていった。……お浜館といわれている忠秋は藩主の弟で、よくいえば濶達な、悪くいえば粗暴な青年だった、江戸屋敷でもてあまされた結果、この国許の湖畔の館へ蟄居させられている、藤六もたびたび遠くから姿を見たことがあるが、白皙の癇の強そうな顔、大股にさっさと歩く身ごなしなど、いかにも