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うんめいのままに

運命のままに

豊島 与志雄

「黒潮 第壹卷第貳号」太陽通信社、1916(大正5)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,406 字 · 57 页

青空文庫

」

私は黙ってそんな会話をきいていた。そして静子の本当だか戯言だか分らないような話っぷりがやはりその兄にも在るのを見て、不思議な気持ちを覚えた。

歌留多が持ち出されると、私は取れないと云ってただ見物するのを主張したが、英子はどうしても私を許さなかった。

「静子さんはお上手だから私と橋本さんとでかかりましょう。あなたは静子さんの方の遊軍におなりなさいな。……お母さん読んで下さるわね。」

「それじゃ駄目だわ。」と静子は云ったが、私の方をちらと見た。

英子は札を半分ばかり欽一郎の方に持たした。「僕はこんなに沢山は駄目ですよ。」と彼は云ったが、英子はそれを無理に押し付けてしまった。

「また英子さんのチラニーが初まった。」と彼は笑っていた。

勝負は丁度合っていた、と云うより寧ろ誰も真剣になっていなかったという方が正当であったかも知れない。

私は僅かの札数を持って、勝負よりも寧ろ春子さんの美声を楽しんでいた。彼女は英子の何処か濁りのある声とは似てもつかぬ美しい声を持っていた。読札を電燈の光りにかざしながら、少し小首を傾けて何時までも疲れない澄んだ声で読み続けた。それから私はまた静子の思ったより巧みなのに驚いた。