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うんめいのままに

運命のままに

豊島 与志雄

「黒潮 第壹卷第貳号」太陽通信社、1916(大正5)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,406 字 · 57 页

青空文庫

ただ重苦しい堅い石のような力が私をずるずると引きずっていったのである。

私は寒気に曝された荒凉たる郊外の大地の肌を見た。陰鬱な冬の落日を見た。井の頭の冷たい池の水面と、黒ずんだ杉の木立と、落葉の林とを夕暮の靄の中に見た。夜の色が野の上を渡ってくる時、私の心は云い知れぬ戦慄に襲われた。そして魔物に追われるようにして私はまたすぐに自分の下宿に帰って来た。

女中に近くのレストーランから二三品料理を取って貰ってそれを食べた。そして私はすぐに床の中に倒れるようにしてはいった。

凡てが悪夢の形を取って私に現われてきた。私はそれをぼんやりと大きく眼を見開いて眺めたのである。そして私は夢とも現ともつかない境に落ちていった。

真夜中に私は何か物に脅えたように眼を開いた。電燈の光りが室の中に澱んでいた。私はその光りを見つめながら、英子と欽一郎とのことを思ってみた。私は、私と英子とのことを欽一郎に知らせるのが至当であろうかと、そんなことを考えた。然しその時私は、英子との間に何にも重大なものを認めなかった。私が自分で緊と握って来たものはただ空な愛の信念のみであったように思えて来た。