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のわき

野分

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1946(昭和21)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,401 字 · 42 页

青空文庫

「そうか」武士は溜息をつくように、低いこえでそうかと云い、ぞうさであったと、力のない足どりで出ていった。

繋いであった馬に乗り、鞭をあげて、道を二町あまり北へ向って駆けさせたが、刈田が終って、田端の平地の見えるところまで来ると、武士は手綱を絞って馬を停めた。……葉の黄ばんだ雑木林と、枯れた草原のあいだを、道は北へと迂曲しながら消えてゆく、人の影もないうらさびれた眺望を、さらにもの哀しくするように、林をそよがせ枯草をゆすって、ひょうひょうと野分が吹きわたっていた。

「お紋……」口のなかでそっと囁くように、その武士はこう呟いた、「……逢わなければよかった」