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きんぎょはしんでいた
金魚は死んでいた
大下 宇陀児
「宝石九月号」岩谷書店、1954(昭和29)年9月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,514 字 · 22 页
「なあるほどね。こりや、おかしくなつた」
と警部も首をかしげた。
「でしよう? かんちがい、ということもあります。しかし全然いなかつたものを見たというのは……」
「大至急あのお医者さんを洗おうじやないか。何か出るよ。すぐとなりに住んでいるのだ。しかも医者だ。毒物の知識もあるはずだし、青酸加里だつて入手できるのだろう。……よし! やれ! パチンコ屋なんか、あとまわしでいい!」
そうして二人は、いつしよに椅子を立上つてしまつた。
配下のほとんど全員に手配を命じておいて、はじめはしかし、島本守には見張りだけをつけ、事件現場の金魚鉢を調べた。
気がついたとなると、あとからあとからと新しい着眼点がひらけてくる。
小鳥一羽飼つたこともないという、ごうつくばりの因業おやじが、なぜ金魚を飼う気になつたか、その点にも問題がないことはない。
調べると、果してあつた。
金魚鉢は、ぐるりに、白い砂をしきつめてある。砂をはらいのけると、埋めたと見せた鉢が、すぽりと土から抜きとれるようになつているのがわかつた。そして、鉢の下は、みかん箱の大きさの空洞で、つまり、鉢の下に何かをかくしておく場所ができているのであつた。