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きんぎょはしんでいた
金魚は死んでいた
大下 宇陀児
「宝石九月号」岩谷書店、1954(昭和29)年9月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,514 字 · 22 页
二
あなたは庭で老人と立話しをしたつていいましたね。その時金魚は、どんな恰好してました?」
「さア、とくに注意して見たわけじやありませんからね。しかし美しい金魚だとは思いましたよ。ひらひら游いでいましてね」
「そうでしような。私もそれは見たかつたですよ」
刑事は、真実残念そうに、ため息をしているのであつた。
二
被害者刈谷音吉老人は、もと高利貸しでへんくつで、昼日中でも門に締りをしていて、呼りんを押さないと、人を門内へ通さなかつたというほどに用心ぶかく、それに妻子はなく女中もおかず、たつた一人きりで暮していたというのだからそういう特徴から判断してみて、捜査の手懸りは、かえつてつけやすいほどのものであつた。
当局は、日ならずして、三人の容疑者を見つけだすことができた。
三人ともに、老人の家へ時々出入りしているという事実がある。そこから着目してある程度の内偵を進めて、その容疑者を、べつべつに任意出頭の形で警察へ呼び出し、井口警部が直接に訊問してみた。
第一の容疑者は、青流亭というかなり大きな料亭の女将であつて、進藤富子という女だつた。ほんとうの年はもう五十に近く、しかし、磨き上げた美しさで、三十を少し越したぐらいにしか見えない。