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きんぎょはしんでいた
金魚は死んでいた
大下 宇陀児
「宝石九月号」岩谷書店、1954(昭和29)年9月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,514 字 · 22 页
五
残念ながら、その空洞は、文字通りの空洞で何もない。が金魚屋の申立て中にあつた老人の財産についての話と、平松刑事が地金屋から得て来た聞込みとを照らし合せてみて、誰の胸にもピーンと響くものがあつた。買いこんだ金塊や古小判である。それが前にはかくされていて、今はないというだけのことである。
金魚鉢の位置から、庭の楓の葉がくれではあるが、島本医院の白壁が見えていて、もしその壁に穴があると、こつちを見おろすこともできるはずである。多分老人は、しばしば金魚鉢の下を覗きにきたことにちがいない。鉢に水があつただけでは、万一の場合人に怪しまれると気がついて、急に金魚を入れることにしたが、島本医院からは、前からして不思議に思い、老人の挙動を眺めていたものと考えられる。これでもう謎は、大体解けてしまつたのと同じになる。
「だいじようぶだ。やつつけろ!」
と井口警部は、張りきつて叫んだ。
五
医師島本守は、はじめは頑強に犯行を否認した。
が、家宅捜索をすると、時価概算一億円に相当する金塊、白金、その他の地金が居室の床下から発見されたため、ついに包みきれずして、刈谷音吉毒殺のてんまつを自供するに到つた。