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きんぎょはしんでいた

金魚は死んでいた

大下 宇陀児

「宝石九月号」岩谷書店、1954(昭和29)年9月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,514 字 · 22 页

青空文庫

三

単に西部劇だといつたが、テクニカラーかどうか、の質問ではすらすらと、

「テクニカラーでした。すばらしく美しいものでした。筋はありきたりの平凡なものでしたが……」

と答えている。

警察から、市内の全部の映画館へ電話で問合せをした。

その返事だと、五月五日の夜、着色にしろ無色にしろ、西部劇を上映していた館は一つもない。

「あの技師さんに張込みをつけておけ!」

井口警部は、鋭く部下に命令した。

三

青流亭の女将進藤富子も、工学士中内忠も、刈谷音吉毒殺犯人としての容疑は、かなり濃厚だと見てよいのだろう。

但し、当局側の見解では、まだ十分なきめ手がない。監視つきでひとまず帰宅を許したのであつた。

やがて井口警部は、第三の容疑者を呼び出したが、それは皮肉なことに、あの死んでいたランチュウを、刈谷老人の家へ持つてきたという金魚屋である。

四十五歳、名前が笹山大作だつた。

その容疑のもとは、中内工学士の場合と似ていて、金魚屋と老人との間に貸借関係があり、裁判沙汰まで起したという事実からである。金魚屋は、その住宅と土地とを抵当にして老人に取られて、再三再四立退きを迫られている。