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いんじゅう
陰獣
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1928(昭和3)年8月増刊~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 66,968 字 · 131 页
だが、若し犯人が春泥だとすると、色々無理が出来て来る。その無理が出来て来る所が、この事件の難解な所以で、春泥が底の知れない悪者だという訳だけれどね。無理というのはね、せんじつめると、二つの事柄なんだが、一つは例の脅迫状が小山田さんの死後パッタリ来なくなったこと、もう一つは、日記帳だとか春泥の著書、「新青年」なんかが、どうして小山田さんの本棚に入っていたかということです。この二つ丈けは、春泥が犯人だとすると、どうも辻褄が合わなくなるんだよ。仮令日記帳の例の欄外の文句は、小山田さんの筆癖を真似て書込めるにしたところが、又新青年の口絵の鉛筆のあとなんかも、偽証を揃える為にあいつが作って置いたとしたところが、どうにも無理なのは、小山田さんしか持っていない、あの本棚の鍵を、春泥がどうして手に入れたかということだよ。そして、あの書斎へ忍び込めたかということだよ。私はこの三日の間、その点を頭の痛くなる程考え抜いたのだがね。その結果、どうやら、たった一つの解決法を見つけた様に思うのだけれど。
僕はさっきも云った様に、この事件に春泥の作品の匂いが充ち満ちていることから、彼奴の小説をもっとよく研究して見たら、何か解決の鍵が掴めやしないかと思って、あいつの著書を出して読んで見たんだよ。