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ようきなきゃく
陽気な客
山本 周五郎
「苦楽」苦楽社、1949(昭和24)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,086 字 · 46 页
……げんにも生きてるうちは文学の神様だなんて云われていた人間が、死ぬとたんに先輩や仲のいい友達からまで悪口を云われたじゃないか。……それだってその人間はその人間だったんだ、それだけは少しも変りはないんだ。……天青だってひところは中央の文壇で作品を認められ、小さいながら劇団を主宰したこともある。価値のいかんは別として仲井天青は仲井天青であったんだ。……それがきみ、それが、……そんな土地へめり込んで、うす暗いじめじめしたごみ溜のような編集室の隅で、椅子の上にあぐらをかいて、ねじり鉢巻で、茶碗酒を呷りながら、ばりばりがりがりとペンの音をさせながら、そんなような思わず顔の赤らむような原稿を書いているんだ。……おれは泣きあしない、ひとをばかにするな、これはそんなめそめそ泣くようなそんな軽薄なもんじゃないんだ。
――福地総務はうつ伏しになって、机の上へ水溜りを拵えながら眠っていたのさ。
――田口氏は三日にいちどぐらいずつ来て、なにかかにかして、では仲井さんお頼みしますと云って、片手に手鞄と洋杖、片手に黒いベルベットの帽子を持って、おっとりと一歩一歩おひとがらに帰っていった。