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ようきなきゃく

陽気な客

山本 周五郎

「苦楽」苦楽社、1949(昭和24)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,086 字 · 46 页

青空文庫

――天青はだんだん深酔いをするようになっていった。

――おれの初めての月給、つまり十月分の月給は一枚の計算書だった。袋の中にはほかになにも入ってはいなかった、そうしてその計算書のいちばん下には赤い字でそくばくの金額が書いてあったものさ。……これを要するに飲屋と弁当屋が勘定を取っていったんだが、その結果として赤い数字だけおれの月給からはみ出たというわけなんだ。おれとしては失望でもあり不満なような気持だったが、よく世間で云う赤字なになにというのはこのことなんだと知って、少しは教訓も得たような感じだったと思う。

――天青はその点もっと状態がいけなかったらしい。会計……といっても社長の妻君なんだが……は飲屋その他の彼の勘定をみんな拒絶した、つまるところ天青にはそれらの勘定を支払うべき余り分がないばかりか、さらに多額の前借があって、会計としてはもはやそれらに対する責任が負えないというんだった。……しぜん飲屋その他の勘定取りは編集室へやって来た。そこでそういう際に多くの人々がする通り、彼もまた五日ばかりは社を休んで姿をみせなかった。

――おれはどうしたってもういちどは社長とその妻君のことを云わずにはいられない。