轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ようきなきゃく

陽気な客

山本 周五郎

「苦楽」苦楽社、1949(昭和24)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,086 字 · 46 页

青空文庫

……おい注いでくれ。

――おれが階段を登って編集室へはいったとき、社長室では妻君の罵り声が聞えていた。それはあの灰色の唇が捲れあがり、剥きだしになった上と下の歯ががちがちと鳴る形相を眼の前に見るような声であった。おれはぞっと総毛だった。これは特別演出に属するだろうかどうか、もしそうなら退散すべきなんだがと、椅子に片手を掛けたまま迷っていると、

「いややいややいやや出ていけっ」

こういう叫びに続いてどたんばたんぴしゃぴしゃという物音が起こった。

――おれは幾らか微笑したかもしれない、かなりの痛快な気分を感じたことは白状してもいい。ちょび髭社長といっても男は男であるんだ、そこはやっぱり女とは違うんだ。こう思っていたんだが、……そう思う間もなく襖をあけて社長がとびだして来た、額と頬ぺたにひっ掻き傷が幾条もでき、そこから血が出ているのをおれは見た。彼は寝衣の帯ひろ裸で、廊下へとびだすなりその廊下へ坐って両手をついた。

「悪かった、堪忍して、このとおりや」

こう云って彼はその頭をむやみに上げ下げした。その運動の速さと回数については誇張と思われる危険があるから云うのはよそう、しかし妻君はきききと叫び、社長にとびかかり、髪をひきり、頭や頬ぺたをぴしゃぴしゃ平手で撲り、そして劈くような声で叫びたてた。