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ようきなきゃく

陽気な客

山本 周五郎

「苦楽」苦楽社、1949(昭和24)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,086 字 · 46 页

青空文庫

彼は初めから終りまでおれを見ようとしなかった。焦茶色のようでもあり蒼黒いようでもある痩せた顔や思わせぶりなちょび髭も、ちっぽけなちょこまかした躯つきも、なにもかも急にいやらしく狡猾にみえ、おれは馘になった落胆もあろうが、むかむか肚が立って乱暴なことを云うかするかしたくなってきた。……コーヒーぐらいおごったって大きな顔をするな、そんなぐらいの気持じゃなかったんだ。が、おれは彼を軽蔑すべき人間であると自分をなだめて、わりとしては平静に編集室へひきあげた。

――おれがおれの所有物を片付け終ったとき、廊下をこっちへ来る人の足音がした。すると社長が仲井はんと呼び止めた、つまり仲井天青なんだった。……たぶん月給を貰うんだろう。おれは椅子に掛けて、幾らか悲観めいた気分になりながら待っていたんだが、とにかく天青には訳を話さなければならないと思った。……彼はなかなか来なかった。低い声でしきりになにかぼそぼそ云っているらしいんだ。なかなか済みやしないさ、……おれは廊下のところまで立っていってみた。

――仲井天青は社長の前にかしこまっていた。両手を膝へついて頭を垂れていた。