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ようきなきゃく

陽気な客

山本 周五郎

「苦楽」苦楽社、1949(昭和24)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,086 字 · 46 页

青空文庫

知れたこと、唇が捲れあがって歯が剥きだしになっていた。彼女は天青の脊中へひいとかじりついた。

「なにさらす、このばらけつめ、ぬすとう」

彼女はかなきり声で叫びたてたさ。

「誰ぞ来てえ、ぬすとうやぬすとうや、誰ぞ来てえ、巡査呼んでえ」

おれは彼女をつきとばした。これはうかうかしていては損害になるように思えたんだ。おれはヒステリイ女の妻君をつきとばし、天青を社長からり取った、妻君がまた立って来たからまたつきとばした。社長をもつきとばしたかもしれない。……おれとしては大活躍なんだ。それからおれは畳の上にあった天青の月給袋を拾い、天青をひきずるようにして、まあそのほかいろいろしたさ。そうしておれは靴を持ち天青は下駄を持って外へとびだしたんだが。……あのいやらしい妻君のぬすとうやぬすとうやという喚き声が、いつまでもうしろから追っかけて来るような気分には弱らされた。――おれたちは汽車道まで走りどおしに走った。それから誰も追っかけて来る人間のないことを慥かめてひとまずそこの道傍にある材木のようなものに腰をおろした。二人としては顔を見合せたんだが、天青ははあはあ息をきりながら、