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ゆきこんじゃくものがたり
雪今昔物語
中谷 宇吉郎
「自然」1947(昭和22)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,695 字 · 32 页
両陛下のお椅子を前にして、電気工夫まがいの仕事をするのが、妙に周囲の空気とくいちがって見えた。
このお部屋へこういう器械が持ち込まれたことは、全く初めてのことだそうである。宮中のことであるから、電圧は大丈夫と思っていたが、測ってみたら九十ボルト近くまで落ちていた。この拝謁の間にだけは、小さい電気ストーブがはいっていたが、それでも随分寒かった。控の間で昼食を頂いたが、スチームが全然通っていないので、何処も非常に寒かった。侍従の方が「かまいませんからオーバを着ていて下さい」とすすめられたので、遠慮せずに、襟巻と外套ですっかり身ごしらえをした。東京の十二月、火の気なしのコンクリートの建物では、それも止むを得ないのである。
頂いた昼食なども極めて簡単なものであった。すべての様子が極めて御質素で、恐らく一般国民の想像以上であった。もともと宮中は、以前から御質素であったそうである。昭和十六年の五月、人工雪の研究で学士院賞をもらった時に、千種間で御賜餐にあずかったことがあるが、その時にもこの感を深くした経験がある。太平洋戦争勃発の半年前のことで、いわゆる国威隆盛の極にあった時の話である。