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ゆきこんじゃくものがたり

雪今昔物語

中谷 宇吉郎

「自然」1947(昭和22)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,695 字 · 32 页

青空文庫

意気込みもちがっていたし、それに低温室を専用出来たので、不断の六カ月分くらいの進歩が、一カ月で得られた。そのうちでも、戸田君の装置が一番成績がよかったので、それを三個と、他に二種類各一個との装置を作った。当日は全部で五個の装置を用いて、時間を少しずつずらせて結晶を作り、どう間違っても、そのうちどれかの中では、陛下御入室の時刻に、ちゃんと結晶が出来ているというふうな手順をとることにした。

ところで一寸困ったことは、こういう準備に熱中しているうちに、痔を悪くしてしまったことである。それがだんだんひどくなって、十月にはいったら、一晩中眠れないくらい痛むようになった。床の中で助手の人たちと連絡をとりながら、一週間ばかりねていた。柳教授がたいへん心配して見舞に来られて、自分ですっかり手当をして下さったので、二、三日してそれでもどうにか起きられるようになった。

いよいよ行幸の前日になって、大分快いので学校へ出てみたら、たいへんな命令が来た。それは明日は助手の人は低温室にはいってはならないという大学当局からのお達しである。「他の天覧室は一週間も前からすっかり消毒をして立入禁止になっているのだから、低温室も当日は御説明者以外は入室しないように」