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ゆきこんじゃくものがたり

雪今昔物語

中谷 宇吉郎

「自然」1947(昭和22)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,695 字 · 32 页

青空文庫

五

という話なのである。写真や標本だけをお目にかける室と、人工雪のような困難な実験とを一緒に取り扱われては、どうにもやりようがない。宮内官や警察関係の人からそういうお達しの来ることは、充分予期出来ることであったが、科学の殿堂をもって自負している大学側から、こういう話が出たのには一寸驚いた。

五

しかし今さら御辞退も出来ない。

仕方なく物理実験というものの本質から説き起して、誰か側についていないでは、こういう不安定な現象を捕えることは出来ないという所以を詳しく説明した。結局総長の裁断を待てということになって、それを待っていたら、夜晩くなって返事が来た。「一人だけ三時間前まで入室してよろしい」ということであった。

ところがこの三時間前までというのは、実は辛いのである。というのは、当日午後二時半に教授一同に列立拝謁を賜うので、十二時半から二時半までは私はその席に列せねばならなかったからである。御入室は三時三十分であるから、その三時間前までしか助手は入室出来ないとすると、丁度私が列立拝謁のために低温室を離れると同時に、助手の人も低温室を出なければならないことになる。