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ゆきやなぎ

雪柳

泉 鏡花

「中央公論 第五十二年第十三號」1937(昭和12)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,054 字 · 90 页

青空文庫

冷たい手でじっと握った、持たれたその手が上と下に、ふわりふわり――幇間に尾花も変だ、芋が招くように動いて留まない。たちどころに半病人となって、住居へ帰り、引被いても潜っても、夜具の袖まで、ふわふわ動いて、押えても緊めても、頻に動く。学者は舞踏病の一種だと申されよう。日を経て、ふるえの留まらぬままに、一念発起して世を捨てた。土手の道哲の地内に、腰衣で土に坐り、カンカンと片手で鉦を、敲き、たたき、なんまいだなんまいだなんまいだ、片手は上下に振っている。ああ、気の毒だと、あたりの知人、客筋、の行きかえりの報謝に活きて、世を終った、手振坊主の次郎庵と、カチン(講釈師の木のうまい処)後にその名を残した、というのと、次男の才子の容体が、妙に似ている。

が、この方は無事に助かった。細身の大小、まだ前髪立ともいうべき年ごろに、余りといえば手の冷えよう、築地まで帰るのが心もとなく、さいわい蔵前に姉の縁づいた邸があった。いうまでもなく義兄の住居。真夜中に慌しく門を敲いて驚かすと、「馬が一所か。」とも言わず、兄は快く一間に招じた。上品な姉の、寝乱れた姿も見せず、早くきちんと着かえて、出迎へたのも頼もしい。