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ゆきやなぎ
雪柳
泉 鏡花
「中央公論 第五十二年第十三號」1937(昭和12)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,054 字 · 90 页
八
」
「何の事です、それじゃ狒々の老耄か、仙人の化物になる。」
と言ったんだから可恐しい。
狸穴の狸じゃないが、一本松の幹の中へ入った気で居て、それに供えるという処から、入りしなに壜に詰めた白いのを、鼻頭で掻分けたつもりで居る。それが朦朧として、何だかお冬さんの懐の中へ、つまみ込まれたようだったものですから。……何にしろ魔法にかかった、いよいよ魔法に掛ったに相違ない。一口、というのさえ酒でなしに、魔法に限ります、かかり切りになっていりゃ申分はありません。」
といって、肩のめりに、ぐったりと手を支いた。
この獅子屋さん、名も直槙が、くなくなになったから、余程おかしい。
いや、話は可笑しいのではないのである。
八
「御加護、たまわれ。」
……………………
――さて、かくて、曳船の卯の花の時の事、後に柳町の折とては、着て肌を蔽うほどのものもなかった、肌襦袢とあれだけでは、襖から透見も出来なかったことなど聞き、聞き……地蔵菩薩の白い豆府は布ばかり、渋黒い菎蒻は、ててらにして、浄玻璃に映り、閻魔大王の前に領伏したような気がして、豆府は、ふっくり、菎蒻は、痩せたり。