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ゆき

雪

中谷 宇吉郎

「雪」1938(昭和13)年 11月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,536 字 · 152 页

青空文庫

三

更に局部的に言えば、新潟県では、高田、関山、田口、小千谷辺に、富山県では蘆峅寺、黒部峡谷等である。これらの場所の積雪は一丈乃至三丈にも及ぶものがあるから、暖地の者には想像も及ばぬ凄じいものであるといわねばならない。

これは私が今年(昭和十三年)越後の一農村で偶目撃したことである。その村の役場に私たちがいると、たまたま小学校の校長が来て、学校の屋根の雪をまた下ろさなくてはいよいよ危くなったと申出て、役場の人々と協議を始めたが、役場にはそんな金は勿論もうないと言っている。しかし学校の建物は雪の重みでミシミシ鳴っているので、捨てて置くことは出来ない。結局子供たちの生命にはかえられぬということになって、その一回の雪下ろしの費用八百余円が支出される相談になった。

屋根の雪を下ろすのにこのような費用を要するということは、大雪の降る地方の様子を知らぬ人には想像し難いことであろう。

三

この話は現代のことであるが、昔はどうであったかということも、考えて見る必要がある。その一例として『北越雪譜』から雪下ろしについて引用して見ることにしよう。

「雪を払ふは落花をはらふに対して風雅の一ツとし、和漢の吟咏あまた見えたれども、かゝる大雪をはらふは風雅の状にあらず。