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かぜ
風
壺井 栄
「文芸」1954(昭和29)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 38,702 字 · 78 页
茂緒の行動には何もふれていなかった。それがかえって皮肉に感じられ、茂緒は、
「あなたの家って、やっぱり、格式ばったこというのね。わたしの家へ申しわけないなんてことないわ。あいこですもの。むしろわたしの方が押しかけてきたみたいな形ですもの。」
「押しかけ女房か。」
「そこへゆくと、わたしのうちなんて、ものわかりがいいわね。よくぞ押しかけたと喜んでるみたい。」
まだ小学校五年の小菊が、「茂姉さんの結婚には大さんせいです。お父さんもお母さんもよろこんでいます。荷物はすぐおくります。修造さんによろしく。」
と、まるで自分が相談でも受けたようなませた書きぶりで手紙をよこし、そこには三十円の小為替が入っていた。小菊は母の口うつしらしい文句で、「ながいあいだ家をすけてもろうたのに、たんすも買うてやれず、かいしょのない親ですが、せめて鏡台なとお買いくだされ。」
茂緒はさっそく出かけていって二十円で鏡台を買い、三円の針箱と一円の小さなチャブ台を買った。残りで五円五十銭の水屋を買うというのを、修造は、
「ぼくのうちからも、そのうちきっと送ってくるからね。その五円、かしてくれないかね。