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かぜ
風
壺井 栄
「文芸」1954(昭和29)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 38,702 字 · 78 页
」
自分の持っているのと合わせて、せめて下宿のふとんだけでもとってくるというのだ。結婚して一週間、貸ぶとんはまだ借りていたのだ。修造はさっそく近所で大八車をかり、IやNの助けをかりて、ふとんを運んできた。はだかのふとんと一しょに、大小の柳行李が八つついてきた。机も本箱もないのに行李が八つなのだ。しかも、ほとんどそれはからっぽだった。
「まあ、どうして?」
「親不孝の、証拠品さ。」
修造はNたちと顔見あわせて笑った。みちみち、彼らは行李の由来を聞いたらしい。そんなときでもNの笑いには無気味な冷たさが感じられた。Iの調子のよさは、まるでちがっていた。といってIにはまた、油断のならぬ目の色があった。こんな顔は、田舎では見られなかった。前科三犯の元さんという肥かつぎだって、もっと親しみのある顔だったし、役場の浜本さんがいくらへんくつで、無口でも、渋柿というあだ名の渡辺さんがいくら渋っているときでも、NやIよりは近づきやすかった。
荷物をはこびこむと、車をかえしがてら貸ぶとんを積みこんで、男たちはまた出かけていった。なにかそれは途中で約束でもしていたらしく、なんとなく修造の顔にそれが出ていた。