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かぜ

風

壺井 栄

「文芸」1954(昭和29)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 38,702 字 · 78 页

青空文庫

「ああ、うまい、わたしも一つたのも。」

お代りを注文しておいて、飢えた人のように熱心に操子はそれを食べたが、お代りがきたときには、もう手が出なかった。彼女はまた例のかわいらしさで笑い、

「わたしたちの食慾なんて、たいしたことないのにね。ラーメン二つ、食えないんだもの。」

茂緒は深い感銘でその日の操子が心に残った。その夜、茂緒は夫に語った。

「ね、どうしてもわたし、感心しないわ。操子さんまでが、とうとうK紡績へ手紙出したのよ。」

「へえ。」

「アナキストって、なんていやらしいの。あなたも前にはあんなことしてたの。」

「ああ。」

「けいべつに価いするわ。」

「そうだよ。自分でもいやんなっちゃうよ、今じゃあ。その時としての言い分はあったがね。」

「きたないわ。そのくせ、二口目には、ボル(ボルシェヴィキ)の奴ら、ボルの奴らで、ガーン。ボルの奴らに政権とらせてなるもんかよ、なんて、まるで資本家よりもそっちの方が目の敵なのね。二円ぐらいに喜んでさ。わたしはよく分からないけれど、アナだってボルだって、貧乏人をなくする主義なんでしょ、リャクなんてしないで、堂々とやればいいのに。