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ぎょげんき
魚玄機
「中央公論」1915(大正4)年7月
N1 · 挑战 · 新字新假名 · 9,866 字 · 20 页
大中十一年の春であった。魚家の妓数人が度々ある旗亭から呼ばれた。客は宰相令狐綯の家の公子で令狐※と云う人である。貴公子仲間の斐誠がいつも一しょに来る。それに今一人の相伴があって、この人は温姓で、令狐や斐に鍾馗々々と呼ばれている。公子二人は美服しているのに、温は独り汚れ垢ついた衣を着ていて、兎角公子等に頤使せられるので、妓等は初め僮僕ではないかと思った。然るに酒酣に耳熱して来ると、温鍾馗は二公子を白眼に視て、叱咤怒号する。それから妓に琴を弾かせ、笛を吹かせて歌い出す。かつて聞いたことのない、美しい詞を朗かな声で歌うのに、その音調が好く整っていて、しろう人とは思われぬ程である。鍾馗の諢名のある于思目の温が、二人の白面郎に侮られるのを見て、嘲謔の目標にしていた妓等は、この時温の傍に一人寄り二人寄って、とうとう温を囲んで傾聴した。この時から妓等は温と親しくなった。温は妓の琴を借りて弾いたり、笛を借りて吹いたりする。吹弾の技も妓等の及ぶ所ではない。
妓等が魚家に帰って、頻に温の噂をするので、玄機がそれを聞いて師匠にしている措大に話すと、その男が驚いて云った。