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こくしかんさつじんじけん

黒死館殺人事件

小栗 虫太郎

「新青年」博文館、1934(昭和9)年4月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 页

青空文庫

いや、昨夜この館から、突然消え去った六人目があったという事は、僕の神経に映った貴方がた二人の心像だけででも、もはや否定する余地がなくなりました。こうして、僕の盲人造型は完成されたのです」

真斎は、たまりかねたらしく、肱掛を握った両手が怪しくも慄え出した。

「すると、あんたの心中にあるその人物というのは、いったい誰を指して云うことですかな?」

「押鐘津多子です」法水はすかさず凜然と云い放った。「かつてあの人は、日本のモード・アダムスと云われた大女優でした。五フイート四インチという数字は、あの人の身長以外にはないのですよ。田郷さん、貴方はダンネベルグ夫人の変死を発見すると同時に、昨夜から姿の見えない津多子夫人に、当然疑惑の眼を向けました。しかし、光栄ある一族の中から犯人を出すまいとすると、そこになんらかの措置で、覆わねばならぬ必要に迫られたのです。ですから、全員に嵌口令を敷き、夫人の身廻り品を、どこか眼につかない場所に隠したのでしょう。無論そういう、支配的な処置に出ることの出来る人物と云えば、まず貴方以外にはありません。この館の実権者をさておいて、他にそれらしい人を求められよう道理がないじゃありませんか」