轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

こくしかんさつじんじけん

黒死館殺人事件

小栗 虫太郎

「新青年」博文館、1934(昭和9)年4月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 页

青空文庫

それでさえ、精神的には完全な健康になってしまうのが、つまりあの瞬間にあるのですからね。サア、そのXの実数を云って下さい。降矢木旗太郎……たしかに。いや、いったいそれは誰のことなんです?」

「降矢木……サア」と幽かに呟いただけで、伸子の顔がみるみる蒼白になっていった。それは、魂の底で相打っているものでもあるかのような、見るも無残な苦闘だった。しかし、五、六度生唾を嚥み下しているうちに、サッと智的なものが閃いたかと思うと、伸子は高い顫えを帯びた声で云った。「ああ、あの方に御用がおありなのでしょうか。それでしたら、鍵盤のある刳り込みの天井には、冬眠している蝙蝠がぶら下っておりました。また、大きな白い蛾が、まだ一、二匹生き残っていたのも知っておりますわ。ですから、冬眠動物の応光性さえ御承知でいらっしゃいますのなら……。そうして光さえお向けになれば、あの動物どもはその方へ顔を向けて、何もかも喋ってくれるでしょうからね。それとも、この事件の公式どおりに、それが算哲様だった――とでも申し上げましょうか」

伸子は、毅然たる決意を明らかにした。彼女は自身の運命を犠牲にしてまでも、或る一事に緘黙を守ろうとするらしい。