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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
「新青年」博文館、1934(昭和9)年4月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 页
僕には、この清浄な光がひどく淫虐的に思えてきたよ」
「いや、犯人はけっして、見物人を慾しがっちゃいないさ。君がいま感じたような、心理的な障害を要求しているんだ。どうして彼奴が、そんな病理的な個性なもんか。それに、まったくもって創造的だよ。だがそれをハイルブロンネルに云わせると、一番淫虐的で独創的なものを、小児だと云うがね」と法水は暗く微笑んだが、「ところで熊城君、死体の発光は何時頃からだね」と事務的な質問を発した。
「最初は、卓子灯が点いていたので判らなくなったのだ。ところが、十時頃だったが、ひととおり死体の検案からこの一劃の調査が終ったので、鎧扉を閉じて卓子灯を消すと……」と熊城はグビッと唾を嚥み込んで、「だから、家人は勿論のことだが、係官の中にも知らないものがあるという始末だよ。ところで、今まで聴取しておいた事実を、君の耳に入れておこう」と概略の顛末を語りはじめた。
「昨夜家内中である集会を催して、その席上でダンネベルグ夫人が卒倒した――それがちょうど九時だったのだ。それからこの室で介抱することになって、図書掛りの久我鎮子と給仕長の川那部易介が徹宵附添っていたのだが、十二時頃被害者が食べた洋橙の中に、青酸加里が仕込まれてあったのだよ。