轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
「新青年」博文館、1934(昭和9)年4月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 页
「僕はけっして、そんな意味で云っていやしない。青酸に洋橙という痴面を被せているだけに、それだけ、犯人の素晴らしい素質が怖ろしくなってくるのだ。考えても見給え。あれほど際立った異臭や特異な苦味のある毒物を、驚くじゃないか、致死量の十何倍も用いている。しかも、その仮装迷彩に使っているのが、そういう性能のきわめて乏しい洋橙ときているんだ。ねえ、熊城君、それほど稚拙もはなはだしい手段が、どうしてこんな魔法のような効果を収めたのだろうか。何故ダンネベルグ夫人は、その洋橙のみに手を伸ばしたのだろうか。つまり、その驚くべき撞着たるやが、毒殺者の誇りなんだ。まさに彼等にとれば、ロムバルジア巫女の出現以来、永生不滅の崇拝物なんだよ」
熊城は呆気にとられたが、法水は思い返したように訊ねた。
「それから、絶命時刻は?」
「今朝八時の検屍で死後八時間と云うのだから、絶命時刻も、洋橙を食べた刻限とピッタリ符合している。発見は暁方の五時半で、それまで附添は二人ともに、変事を知らなかったのだし、また、十一時以後は誰もこの室に入った者がなかったと云うのだし、家族の動静もいっさい不明だ。