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あすなろう

あすなろう

山本 周五郎

「小説新潮」新潮社、1960(昭和33)年8月~9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,925 字 · 41 页

青空文庫

そこで彼はまた含み笑いをした、「或る女はどうしても口を吸わせねえ、これだけはきれいにして嫁にゆきてえ、って云うんだ、またべつの女は乳に触らせねえ、乳だけは亭主になる人へきれいなまま持ってゆきてえ、って云うのよ」

「その次は臍か」

「嘘じゃねえってば」と政は口を尖らして云った、「口だけはとか、乳だけはとか、嫁にゆくときの自分の気慰めだろう、どうしても触らせねえ女が幾人かいた、けれども、肝心なところを除けた者は一人もなかった、ほ、いやこいつは正真正銘のことなんだよ」

「どっちでもいいが、ほんとだとすれば罪な野郎だ」と文次が云った、「そうやって女をものにして、たのしむだけたのしんだあとは売りとばすか」

「それも女のおかげさ、四つか五つから女の子にちょっかいをだされて、十四五になるともう女のほかになんにも興味が持てなくなっちまった」政はなんの感情もない微笑を唇にうかべた、「どんなに惚れた女でも、ものにしちまうともうそれっきりさ、すぐに次の女が欲しくなり、その女をものにするためにこっちの女を売る、考えてみればなさけねえようなもんだ、まったくのところ、自分で自身がなさけなくなる