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いさましいはなし

いさましい話

山本 周五郎

「講談雑誌増刊号」博文館、1950(昭和25)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,835 字 · 73 页

青空文庫

「このあいだ二本松の話をちょっと聞きましたが、そこまでゆかずに、なんとかする法はなかったものですかな」

「――私もいろいろ考えたのですが」

「これでよくなる一面もあろうが、いっそう悪い反面が出て来ると思う、……だいたい刀を抜きたがるような人間は野蛮で愚昧ときまっているので、そこがまた始末に困るのだが、力で負けると次には卑劣な報復をしたがるものですからな」

「――けれども若い者のようすがだいぶ変ってきましたし、役所でもかなり仕事がしやすくなりました」

「慥かにそうのようですな、初めて貴方のねうちがわかったという声もだいぶ聞くようです、だがどうもそこがむずかしいと思うのですよ、貴方に人望が集まってゆくとすると負けた人間はさらに陰険になりそうで……」

すっかり量の減った水は、川底の石の数もよめるほど澄み徹り、いかにも冷たそうに冬の空をうつしている。瀬の音も、老人の呟きのように静かで、両岸の雑木林は、すっかり裸になっていた。

津田は暫く黙っていたが、ふと、にこやかな表情になって、話を変えた。

「ときに、お家のほうはうまくいっているそうで、ようございましたな」

「やあどうも、そんなことまでお耳にはいっては」