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おみつかんざし

お美津簪

山本 周五郎

「キング増刊号」大日本雄辯會講談社、1937(昭和12)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,158 字 · 26 页

青空文庫

「――幾匹いるかしら」

「五匹よ」

「みんな未だ裸だな」

「……生れたばかりですもの、もう少しすれば毛が生えてよ、――きっと」

お美津の声は哀れなほど顫えていた。触れ合っている肌はじっとりと汗ばんで、小さな胸が喘ぐような息遣いに波打っている、――面白いものを見せるからと云って、正吉をここへ誘って来たお美津の本当の気持が、その荒い息遣いの中で精いっぱいに叫んでいるのだ。

正吉はじっとしているのに耐えられなくなって、いきなり手を差出した。

「こいつ、捨てなくちゃ」

「駄目よ」

お美津は慌ててその手頸を掴んだ。

「可哀相じゃないの」

「だって、――蔵の中にこんな……」

「いけない、いけない」

二人は眼を見交わした、二人とも真青な顔をしていた。正吉の手頸を掴んだお美津の手がわなわなと戦いていた。然しその眸子は、急に大胆に輝き、朱くしめった唇は物言いたげに痙攣った。正吉は手を振放そうとした、お美津はそうさせまいとした、おどおどしたぎごちない争いが起った、お美津がよろめいたので正吉が支えた、そのとたんに二人は、何方からともなく互いの体を抱き合った。

「――いや! いけない」

火のようなお美津の息吹と、