轻松读懂日语经典作品
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おみつかんざし
お美津簪
山本 周五郎
「キング増刊号」大日本雄辯會講談社、1937(昭和12)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,158 字 · 26 页
亭主は燗をつけながらじろりと見た。――厭な眼つきだった。
「さっきはそんな景気じゃあねえようだったなあ」
「だから祝って貰いに来たのよ」
「そいつあ豪気だ、――陸を行くかい」
「船だよ。おっと来た」
亭主が燗徳利と盃を二つ持って来るのを、待ち兼ねたように正吉は献した。
「さっきのお返しだ」
「そう云われちゃあ恥入りだ、貰うぜ」
「海上無事を祝ってくんねえ、――明日の朝あもう江戸ともおさらばだ。十二年振りに帰る長崎、変ったろうなあ、眼をつぶると見えるようだぜ」
「さあ返盃だ――」
「おらあいけねえ、いまの先断ったばかりだ、おらあこれから生れ変るんだ、故郷へ帰って始めっから遣り直すんだ、何も彼もこれからなんだ」
「そいつあ良い思案だ、けれども容易く出来るこっちゃあねえ」
「そうだ、人間一匹生れ変るなあ容易いこっちゃあねえ、けれどもおらあやるんだ、例え嘘にでも、一度だけあ真人間の姿を見せてあげてえ人がある」
「分ってるよ、恋人だろう」
「そうじゃあねえ、昔は知らず今はそう云っちゃあ済まねえ人だ。――ああ、今夜は色々な事があった、二十四の今日までをひと纒めにしたよりも、もっと変った事ばかり起った」