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このこをのこして

この子を残して

永井 隆

「この子を殘して」大日本雄辯会講談社、1948(昭和23)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,102 字 · 203 页

青空文庫

――火の利用、機械の利用、石・木・銅・鉄・アルミニウムなどを用いて、また蒸気・電流・電波などを用いて――。それから田や畑での栽培による食糧増産……など――」

「そう。たしかにそうだ。しかしその中には天然に在る物をそのまま使っているのが少なくないね。石炭・石油・魚・金属・綿・羊毛・牛乳・牛肉……人間の工夫は、それにはあまり入っておらない。石炭を掘って燃やす、魚を片っ端から獲る、山の木を切り取って家を建てる、火をつくる、実のなる草や葉の食える草を集めて田畑に植える。知恵がなくて本能だけで生きている動物とあまり変わらない生活をしている。まるで思慮の足りない息子が親の残した財産を居食いしているようなものだ。そうして、自分のまわりの物を使い果たしてしまうと、隣へ出かけて腕ずくで奪おうとする。こんな連中は猛獣だね。なんでもないことにすぐ闘争という言葉をくっつけて歯をむきたがる。これではなんのために人間であるのかわからない。知恵をどこへ置き忘れたのか? と問い直したくなる」

「知恵をはたらかして新しい資源をつくったというと、どんなものですか? たとえば――」

「空中窒素の固定・人造樹脂・ナイロン・電波の中の一部、たとえば無線電信電波・短波・超短波・エックス線など。